週刊シネマイモ

その日の映画、その日のうちに。

「湯を沸かすほどの熱い愛」を観ました。涙のダムが、完全崩壊。見逃し厳禁の大傑作。

f:id:pulp-fiction1330:20161105110200j:image 

 

1年前、あるじの一浩(オダギリジョー)が家を出て行って以来銭湯・幸の湯は閉まったままだったが、双葉(宮沢りえ)と安澄(杉咲花)母娘は二人で頑張ってきた。だがある日、いつも元気な双葉がパート先で急に倒れ、精密検査の結果末期ガンを告知される。気丈な彼女は残された時間を使い、生きているうちにやるべきことを着実にやり遂げようとする。(シネマトゥデイより)

 

正真正銘の大傑作。すごいです。

 

ここまで映画館で泣いた映画は、生まれて初めてです。泣かなかったシーンの方が少ないかもしれない。涙腺崩壊とはまさにこのことで、次々と押し寄せる展開に涙が止まりませんでした。

 

正直、難病モノ・余命数か月モノの映画は苦手です。この映画も一見、そう見えます。

 

でも、違うんです。全然違うんです。

 

この映画は死にゆく宮沢りえに涙する映画じゃなくて、宮沢りえが家族を文字通り「湯を沸かすほど壮大な愛」で包み込む、そんなゲキアツの家族ドラマなんです。

 

f:id:pulp-fiction1330:20161105110250j:image

 

「とににかく泣ける!」というと安っぽくて嫌なんですが、次から次へとやってくるエピソードの連続に、涙のダムが決壊します。これでもかというほど、涙が止まりません。

 

その涙の種類も色々で、切ないから涙する、嬉しいから涙する、悔しいから涙する、などさまざま。

 

タオルでも足りない。ハンカチなんてもっての外。涙腺崩壊必至の傑作家族ドラマです。

 

f:id:pulp-fiction1330:20161105110320j:image

 

まずは丁寧に作り込まれた脚本が、本当に見事です。何気ないエピソードが伏線になっていたり、キャラクターのセリフや泣かせにかかる展開(決して いやらしくない)が、めちゃくちゃ丁寧で、意外性に溢れている。こんな映画、あまり見たことがありません。常にいい意味で裏切られる展開が続きます。

 

また、高足ガニやピラミッド、しゃぶしゃぶなど、キーとなるアイテムの使われ方が見事「そう来たか!(涙)」の連続でした。本当に休む間もなく、次から次へと感動ポイントがやってくるので、受け止めるのに必死です。

 

双葉が好きな「赤」という色を中心にアイテムがまとめられているのも良かったですね。双葉がトイレで吐いた血すら芸術的に見えました。

 

f:id:pulp-fiction1330:20161105110426j:image

 

 脚本・監督を務めたのは、今作が商業映画デビュー作となる中野量太監督。

 

正直、デビュー作とは思えません。すごすぎます。

 

「ここは見せて、ここは見せない」というセンスが抜群で、あまりネタバレは避けますが、印象的だったのは 安澄が死ぬ間際の双葉に会いに行くシーン。


普通のお涙頂戴ものであれば、一言二言会話して、「お母さん…」みたいなベタな展開だと思います。

 

でも、このシーンでは中々双葉を映しません。

しばらく安澄が一方的に話をしていて、双葉は生きてるの?とハラハラしていると、 突然、双葉が映ります。

 

そこに映し出されるのは、頬がこけ、目が突き出て、今にも死にそうな双葉。

 

衝撃でした。

 

今思い出しても鳥肌が立ちます。

 

癌で人が死ぬということはこういうことなんだと。

 

死ぬっていうのは、そんな甘くないんだよと。

 

胸にグッッッサリ、刺さりました。

 

普通の難病モノだと、絶対にここまで見せません。

 

安易な映画にしないぞ、という監督やキャストの覚悟が見えました。

 

パンフレットにも書いてありましたが、このシーンの撮影後 キャストや監督は大号泣されたそうです。その魂、観ているこちらまで届きました。

 

f:id:pulp-fiction1330:20161105110759j:image

 

あと、銭湯を経営しているという設定も良いですよね。個人的に銭湯は大好きなので、めちゃくちゃ銭湯に行きたくなりました。この設定がラストの展開にも効いてくるんですが、そこはネタバレですので避けますね。色々賛否あるみたいですが、私は好きです。というか、最高です。

 

f:id:pulp-fiction1330:20161105110836j:image

 

あとはやっぱりキャストの皆さんの演技が素晴らしい。宮沢りえさんはもちろんのこと、脇を固める杉咲花さん、オダギリジョーさん、伊東蒼ちゃん、 篠原ゆき子さん、駿河太郎さん、松坂桃李さんの双葉ファミリー(と勝手に呼んでいます)の演技のアンサンブルが、最高でした。

 

個々がというより、 これは完全にチームプレイですね。圧倒的でした。

 

しゃぶしゃぶで伊東蒼ちゃんが泣きながら
語るシーンなんか、嗚咽出るくらい泣きましたね。

 

f:id:pulp-fiction1330:20161105111032p:image

 

「湯を沸かすほどの熱い愛」、このタイトルも好きです。字体も、ロゴが出るタイミングも完璧。

 

f:id:pulp-fiction1330:20161105124128j:image

 

  監督はこの映画を撮影する際、スタッフに「みんなが家族に見せたくなる映画を作ろう」とおっしゃったそうです。

 

素晴らしいですよね、この言葉。

 

自分の大切な家族みたいな存在の人に薦めたくなる、まさにそんな映画です。

 

 

 f:id:pulp-fiction1330:20161105124132j:image

 

キャストとスタッフが一丸となり、まさに文字通り「湯を沸かすほどの熱い愛」で製作された本作。間違いなく自分のオールタイムベストに入るであろ う、見逃し厳禁の大傑作です。

 

今年一番出ちゃったかも。

 

 

監督・脚本:中野量太
キャスト
宮沢りえ
杉咲花
伊東蒼
篠原ゆき子
駿河太郎
松坂桃李
オダギリジョー

 

 f:id:pulp-fiction1330:20161105120606j:image

 

★5.0点