週刊シネマイモ

その日の映画、その日のうちに。

「デッドプール2」を観ました。アクションもグロも悪ふざけ度も過去最高レベル!【65点】

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やっぱり今回もぶっ飛んでんなぁ!おい!っていう1作でした。すごいです。前作のヒットで予算が格段に上がったのか、豪華なアクションシーンのオンパレードに度肝抜かれます。それに加えて、嫌なところをちゃんと見せる爽快なまでのグロ描写は今作でも健在で、途中に身体が真っ二つになるのは「エイリアン2」のビショップみたいで笑ってしまいました。冒頭から、「えっ!?その人殺しちゃうの!?」って思ってたら、007風のオープニングの字幕でそこをすぐにイジってくるので、あっという間にデップーの世界観に引き込まれます。そうそう、デップーはこういうメタ的な内容が詰まりまくったこんな世界観だよなと頷き、ニヤニヤしながら見てしまいます。全編を通して、相変わらずのデップー印でアクションシーンも格段にバージョンアップしまくりなんですが、特に好きだったのは、少年を助けるためにチームを結成して輸送トラック乗り込んでバトルを繰り広げるシーンでした。ただただ「運」が強いというそれありかよ!?的な(デップーも脚本が荒いと劇中で突っ込む)能力を持った新女性キャラがなぜかすごく好きで、事態を強運でスマートに回避していく様と、ボロボロのデップーとの対比がなんかすごく面白かったです。新キャラにジョシュ・ブローリンを持ってくるところも渋すぎるけど、めっちゃよかったです。チームに加わった感じだったけど、次からどうなるのかな。楽しみです。タクシーのインド人運転手や盲目のおばあちゃんなど、旧キャラもしっかり活かされてたのもよかったです。インド人はどんどんサイコパス度が上がっていってたけど大丈夫かな、、、でも奥さんの出番が少なかったのは少し残念だったかな。設定上、仕方ないんだけど。あと正直、前作以上にX-MENシリーズとの絡みがあったので、恥ずかしながらX-MENシリーズ未見の私には分からないネタが前作以上に多かったです。そこは自分が悪いのだけど、少し残念でした。あとアクションシーンはとにかくお金がかかってる感がすごくあって、IMAXでも見応え抜群でした!ただ、デップーの死に方にはすごく個性があったんだけど、敵の倒し方とか戦い方にはもう少しいろんなパターンが見たかったなぁというのが本音です。アクションシーンが前作より多くなったから仕方ないんだと思うんだけど。へし折られた腕を使って首を絞めるシーンはすごく好きでした。ただ兎にも角にも、やっぱりデップーシリーズはデップーたちのグロお下劣なんでもありのくだらない悪ふざけを楽しみに行っているので、もう今作は大満足です。きっと今の時代に生きていないと面白さが分からないであろう、究極の悪ふざけエンターテイメント作品の続編!次回作も楽しみ!次はバックトゥザフューチャーみたいになるのかな!?

65点/100点

「万引き家族」を観ました。兎にも角にも安藤サクラがすごすぎる。【80点】

 

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なんだろうとにかく、見終わって、今、頭がクラクラしています。思考や感情が追いつきません。是枝監督作品だからもちろん覚悟はしていて、休日の、体調がすぐれている今日に見たのですがやっぱりそれでもヘトヘトに。善か悪かでハッキリと測ることのできない登場人物たちの行動や言動が、その都度突き刺さってきて、胸がきゅうううううっと締め付けられています。物語の終盤は、登場人物たちの会話だけで、なぜか涙が止まらなくなります。なんで泣いてるのか分からなくなるんです。もしかしたら登場人物たちもそうなのかも。凛ちゃんがあの家族から引き剥がされて悲しい、、、なんていうそんな安易な涙じゃないんです。胸がひたすらに苦しくなるんです。安藤サクラの取り調べシーンが一番やばかったです。拭っても拭っても溢れ出てくる涙。彼女は「なんでしょうね」と何度も囁く。今後も自分の心にずっと刺さり続けるシーンになると思います。自分の感情のダムが決壊して、涙も出るし心がぐちゃぐちゃになってしまう。そんな映画体験でした。キャストの皆さんの演技は全員文句無しで、リリーさんや樹木さんはもちろん、松岡さんも子役の2人も素晴らしかった。でも、とにもかくにも安藤サクラもうこの人の演技はもはや神の領域でしょ。さっきも書いたけれど、取り調べシーンで涙を流すシーンはもうすごすぎて言葉を失くしました。彼女は一生懸命役を演じているというよりも、そこにいる。まさにそこにその人で立っている。なぜあんなにナチュラルなのか。演じている感じが出ないのか。本当に言葉がありません。素晴らしいです。何が正しくて、何が正しくないのか。それは観客の解釈に委ねられるし、映画で答えは出されません。万引きはいけないことだし、老人の年金を頼りに居候している大人なんて普通ははぁ?って感じだと思います。では、虐待を受けていた少女を救った人は悪なのか?ていうかそもそも万引きって、何でダメなのか?安藤サクラは凛ちゃんを誘拐ではなく「拾ったんです」と言います。「捨てた人がいるから拾った人もいるんじゃないですか」と。捨てた人は追求されずに、なぜ拾った人が追求されてしまうのか。なぜ彼らはこんな生活をしているのか。なぜこんな状況になってしまったのか。誰が拾ったのか。それは、物語の後半で明かされていきます。それまではみんな過去に何かあったのかな、、、とふわっとした状態で見れるので、温かいホームドラマのようにも見えます。でも、家族が逮捕されたあたりから物語のトーンは一変。真っ暗闇の灰色の淀んだ空気に包まれます。温かい家族が何となくの絆で結ばれていたと思っていた。これからもこのまま行くんだと思っていた。でも違った。それは間違いだった。駄菓子屋の店主からお兄ちゃんは言われます。「妹にはやらすんじゃない」と。お兄ちゃんの善悪の定義が初めてここで揺らぎ、その教えが、このふわっとした温かいように見えた家族を崩壊させることになります。彼らは現実世界を真正面から受け止めることなく、ぬるま湯に浸かり続けて、ダラダラと底辺で暮らしていた。甘えていたとも言えるかもしれません。それは間違いないし、それしかできなかったのでしょう。それぞれが依存して暮らしていたとも言えるかもしれません。その家族っぽい依存関係が崩壊した時、彼らは弱い自分をさらけだし、涙し、お兄ちゃんに正直に包み隠さず全てを話すんです。そしてお兄ちゃんはバスに乗り、振り返ることなく(少し見るけど)去っていく。凛ちゃんは元の家族のところに戻り、おそらく再びひどい扱いを受けながら暮らしている。でもその目は冒頭とは違い、どこか力強い。ラスト、彼女の見つめる先が日に照らされていたことに唯一の希望を感じました。また劇伴を担当されていた細野晴臣さんも素晴らしかったです。不思議な音色や和音の使われ方が絶妙で、異様な家族っぽい関係の雰囲気に効果的な味付けがなされていたように思います。とにもかくにもパルムドールにふさわしい、というかパルムドールっぽい重たい余韻が漂った、心も頭も追いつかない今後も心にぐさっと刺さり続けるであろう是枝監督の魂の込もった珠玉の1作です。

 

80点/100点

「LION/ライオン ~25年目のただいま~」を観ました。実話モノとあなどるなかれ。無駄なく紡がれたシーンの数々と、役者の丁寧な演技が沁み渡る傑作ヒューマンドラマ!

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 インドのスラム街。5歳のサルーは、兄と遊んでいる最中に停車していた電車内に潜り込んで眠ってしまい、そのまま遠くの見知らぬ地へと運ばれて迷子になる。やがて彼は、オーストラリアへ養子に出され、その後25年が経過する。ポッカリと人生に穴があいているような感覚を抱いてきた彼は、そ れを埋めるためにも本当の自分の家を捜そうと決意。わずかな記憶を手掛かりに、Google Earthを駆使して捜索すると……。(シネマトゥデイより)

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Google Earthを使って、昔の記憶を頼りに二度と会えなくなってしまった家族と再会する涙涙の感動の実話モノ。…というのが、予告編を見ていた時の印象でした。この期待、いい意味で裏切られました。こういう実話ものっていくらでも話を盛ったり、主人公を辛そ~に見せたり、泣かせポイントみたいなのが分かりやすくあったりしがちだと思うんです。が、本作は全くそんなことなくて、真摯に事実と向き合い、非常に丁寧にストーリーが紡がれていて、いつの間にか、つらーっと涙が頬を伝うような珠玉の1本となっています。

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映画はまず、スラム街で家族と暮している5歳のサルーを丁寧に描きます。予告編を見ている時は、まさかこの部分がこんなに丁寧に描写されるとは思いもしませんでした。この作戦は、作り手側の大勝利だと思います。汽車に飛び乗り、石炭を盗む兄弟。その石炭を少しの牛乳にかえ、家族みんなで飲む。貧しいけれど笑顔の絶えない彼らの生活は、見ていて微笑ましくなります。そんな中、あることがきっかけで5歳のサルーは、インドの見知らぬ街で迷子になってしまいます。兄や母の名を懸命に叫ぶサルーですが、声は届きません。何度も危ない目に遭うサルー。手に汗握る展開が続きます。この少年期のシーンのストーリーとシーンの紡がれ方が本当に見事で、映画にぐいぐい引き込まれます。音楽も暗くて張りつめていて、緊張感が切れません。自分もサルーと一緒に迷子になっているかのような錯覚に陥るほどです。

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そんな中、孤児院に入れられたサルーは、幸運にもオーストラリアの夫婦に養子として引き取られます。ここで育ての親を演じるのが、デヴィッド・ウェンハムと、ニコール・ キッドマンなんですが、この2人の演技が本当に素晴らしかった。2人とも、とにかく無償の愛をささげてくれる感がすごいんです。息の詰まる地獄のような町から抜け出したサルーが温かい2人と出会い、一緒に暮らしていくシーンは、見ていて涙が止まりません。

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 そしてここから時代は25年トリップして、デヴ・パテル演じるサルーが登場します。料理で出てきた揚げ菓子によって幼い記憶が蘇ったサルーは、Google Earthを使って故郷の街を探し始めます。少しネタバレしちゃうと、意外と故郷はアッサリ思い出して見つかっちゃうんです。でもそこにたどり着くまでの人間ドラマが物凄く丁寧に描かれていて、ニコール・キッドマンとデブ・パテルが涙ながらに語るシーンは胸を打たれます。

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 しかし、やはりこの映画でずば抜けた演技を見せているのは、幼少期のサルーを演じたサニー・パワールくん。どれだけ辛い状況でも涙を流さず、強いまなざしで現実を受け止めるその姿は、決して誰にもできないであろう唯一無二の演技でした。

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そして、なぜ本作のタイトルが「LION」なのか。それが最後の最後に明かされ、Siaの「Never Give Up」が流れ始めます。ここ、思わず声が漏れました。最高のラストです。素晴らしい。監督のガースデイビスは、何と本作がデビュー作。今後の作品が楽しみですね。

実話モノとあなどるなかれ。無駄なく紡がれたシーンの数々と、役者の丁寧な演技が沁み渡る(特に幼少期サルー!)、心洗われる傑作ヒューマンドラマです。是非、劇場で。

 

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スタッフ
監督: ガース・デイヴィス
脚本: ルーク・デイヴィス
キャスト
デヴ・パテル
ルーニー・マーラ
デヴィッド・ウェンハム
ニコール・キッドマン
サニー・パワール

★4.2点

「モアナと伝説の海」を観ました。驚愕の映像美と素晴らしい音楽のアンサンブルで、南国に旅行したような気分になる最高峰のディズニーアニメーション。

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誰よりも海を愛する少女モアナは島の外へ行くことを禁止されていたが、幼少時に海とある出会いを果たしたことで運命が決定する。モアナは愛する者たちの救済のため、命をつかさどる女神テ・フィティの盗まれた心を見つけ出して再び平和な世界を取り戻そうとする。未知の大海原へと向かったモアナは伝説の英雄マウイと出会い、冒険を共にする。(シネマトゥデイより)

 

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驚くべき映像美。生き物のようによりそう海、砂浜に転がる貝殻、風に揺られるモアナの髪の毛。アニメーションの映像美は、ここまできたのかと驚愕しました。素人目に観ても明らかにすごいです。

 

昨年の「アーロと少年」でも、山や川といった自然描写の美しさに驚かされましたが、今作ではそれが何倍にもブラッシュアップされ、永遠に観ていられるほどの美しさとなっています。

 

特に驚かされるのは、海や水の描写です。今作では、海自体が1つのキャラクターとして登場します。全く言葉は発しないのですが、可愛くクネクネ動く様はとても愛らしく、これまでに見たことの無いキャラクターが誕生しています。

 

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海や水をアニメーションで描くことは、非常に難しいそうです。それが今作では間違いなく1つ上のレベルに到達していて、それを観るだけでも価値があります。

 

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そして、個人的に大好きだったシーンが、カカモラ海賊団とのバトルシーン。ここは、完全に「マッド・マックス 怒りのデスロード」です。海賊船が左右に分かれて、モアナたちの舟に乗り込んでくるところなんか興奮しっぱなし。でっかい太鼓で音楽を奏でているところも、まさにマッドマックス。さすがにギター野郎はいませんでしたが。まぁ、あのミニサイズじゃギター弾けないよね。

 

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あとで調べてみたら、製作側も完全に「マッド・マックス 怒りのデスロード」を意識されていたみたいですね。そりゃそうか、まんまですからね。手に汗握りました。そして、カカモラたちが悪党だけど最高に可愛いんですよね。カカモラたちのビジュアル、めちゃめちゃ可愛くて好みです。フィギュアとかほしいです。

 

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そして忘れちゃいけないのが、今作でかかる音楽です。アナ雪の時の音楽フィーバーは言うまでもないですが、今作でも印象的な歌が数多くかかります。「シャイニー」「もっと遠くへ(フィナーレ)」など好きな曲はたくさんありましたが、やっぱり一番好きなのは屋比久知奈さんの「どこまでも ~How Far I'll Go~」ですね。主人公のモアナの声も担当されていますが、のびやかでまっすぐに心に届いてくる歌声は、涙が出るほど素晴らしく、たっぷり元気をもらいます。エンドロールで流れる加藤ミリヤさんの歌よりも断然、屋比久さんの方が好きでしたね。

 

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そもそもマウイが「あれ」を盗まなかったらこんなことにならなかったのに等ストーリーに突っ込みどころは多少あります。ただそれがほとんど気にならないほど、映像の美しさがすごい。観終わった後には、水、深海、南国、人物、などの映像の美しさと素晴らしい音楽のアンサンブルによって、南国に旅行したような気分になると思います。

 

親子、友達、恋人、1人などどんな形でも観に行くことのできる世界最高峰のアニメーション映画です。

やっぱりディズニーアニメーションは、すごい。

 

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監督

ロン・クレメンツ
ジョン・マスカー

 

声の出演(吹き替え)

屋比久知奈
竹野谷咲
尾上松也

夏木マリ

 

★3.9点

 

「ラ・ラ・ランド」を観ました。なつかしいのに、あたらしい。劇映画とミュージカルの間を絶妙に表現した至極のラブストーリー。とにかく劇場で観てください!

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何度もオーディションに落ちてすっかりへこんでいた女優志望の卵ミア(エマ・ストーン)は、ピアノの音色に導かれるようにジャズバーに入 る。そこ でピアニストのセバスチャン(ライアン・ゴズリング)と出会うが、そのいきさつは最悪なものだった。ある日、ミアはプールサイドで不機嫌そうに 1980年代のポップスを演奏をするセバスチャンと再会し……。(シネマトゥデイより)

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映画史に残るラスト、とはまさにこのこと。最高すぎて、とにかく観て!としか言えません。ネタバレになるので詳しくは書きませんが、ラストの構成を思い付いた監督は、まさに天才的。このラストは、絶対に映画でしかできません。映画でしかできないミュージカル。それを作り出したディミアン・チャゼル監督の手腕には本当に脱帽です。

 

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好きな方には大変申し訳ないのですが、自分はミュージカルが苦手です。 舞台も含め、見ている間に寝てしまうこともしばしばあります。「レ・ミゼラブル」は、正直ほんとにキツかった。なぜ苦手かというと、 あまりに非現実的すぎるからなのかもしれません。各々が歌いながらセリフを言っているのとかを見ると、いやそんな歌って物事伝えるより ちゃんと喋った方が伝わるんじゃない? とか本気で思っちゃうし、え、なんで突然踊り出すの?とか、あまりに現実とかけ離れすぎていて、全く感情移入ができなくなってしまうんですよね。特にセリフを歌にのせて言われるのが苦手なのかもしれません。ラストにみんなで歌って踊るー!とかは結構好きなんですけどね。「天使にラブ ソングを」とか「座頭市」のラストとか。セリフを言うのか歌うのか、どっちかにしてほしいわけです。なので、本作を観る前は、これ大丈夫かなと心配していたんですが、どっこい最高すぎて驚愕しました。

 

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色んな方がおっしゃっていますが、本作はいわゆる「ミュージカル映画」ではないと思います。過去のミュージカル映画へのオマージュもたくさん忍ばせていながら、新しいことに数々挑戦している。どなたかも評されていましたが、「なつかしいのに、あたらしい」。まさにこの通りです。観ていると、「あれこの映画っていつの時代が舞台だっけ?」という錯覚に陥る時が何度かあります。スマホが出てきたり、車が出てきたりで、あ今だ、となるんですが、衣装や音楽、風景を見ているとどこか昔の時代の空気も漂っている。ここが本当にすごいです ね。いろんなアイテムや服の色合いもすごくカラフルで、スクリーンが色んな色で埋め尽くされます。

 

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車が渋滞する高速道路でみんなが歌い踊り出すオープニングも圧巻です。歌と踊りのシーンはすべてがワンカットに見えるような(ほぼほぼ実際ワンカットで撮っている?)映され方で撮影されていて、流麗なカメラワークにうっとりすること間違いなしです。また歌って踊ることが超得意なミュージカル役者を使わずに、俳優として評価 されているライアン・ゴズリングエマ・ストーンを主役にすえたところもこの映画の成功ポイントだと思います。踊り出したり、歌い出すまでの流れが本当にこの映画は自然 なんですよね。全く違和感を感じない。もはやミュージカル映画ではなく、れっきとした劇映画だとも言えるかもしれません。もちろん歌っ て、踊るんですが!

 

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あと細かいところですが、ジャズが嫌いだというミアを、セバスチャンがジャズバーに連れて行き、いかにジャズがすごいものかを語るシーン。このシーンほんと大好きでした。そのあとジャズに全く興味がなかったミアがどんどんジャズにはまっていって…というストーリーには感動すら覚えます。好きなものについて心から熱く語って、それが相手に伝わって、相手も好きになって…とい う、もうこの流れ最高ですよね。

 

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「セッション」でもそうでしたがとにかくこの監督の作る映画は熱い!熱量がすごい。ミュージカル映画ってこんなに素晴らしいんだよ!まさにジャズを熱く語っているセバスチャンが、監督そのものなんじゃないかとすら思えます。若干32歳、今後どんな名作を誕生させるのか期待しかありませんね。

 

そして「セッション」同様、ほぼ2人のメインキャストだけで見せきるのもすごい。この2人以外、あと誰が出ていたかあまり覚えていません。あ、でもジョン・レジェンドはめちゃくちゃ良かったです。

 

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日本のポスターのキャッチコピーにも観終わってから震えました。「夢をみていた」ってそういうことなのね!あー、つながった。ほんとにラストよかったなぁ…。ラストだけ観てもダメなんですよね、ほんとに。それまで観てきてるからこそ来るものがあるというか、あーもうほんとに観てくださいとしか言えない。

 

「セッション」に引き続き、人生の1本になること間違いなしの大傑作。

 

劇場で見なければ、絶対に後悔すると思います。是非、劇場でご覧ください。

 

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監督
デイミアン・チャゼル

キャスト
ライアン・ゴズリング
エマ・ストーン
キャリー・ヘルナンデス
ジェシカ・ローゼンバーグ
ソノヤ・ミズノ

★5.0(満点)

「最後の追跡」を観ました。緊張と緩和の連鎖が最高!情報過多作品が流行りの映画界にガツンと一石を投じる、傑作クライムサスペンス。

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舞台はテキサス。両親の農場が差し押さえられるのを防ごうと、タナー(ベン・フォスター)とトビー(クリス・パイン)の兄弟は銀行強盗を計画。むやみに血を流さないよう慎重に進めるが、出所したばかりのタナーの無鉄砲な行動のせいで計画に狂いが生じてしまう。一方、定年が近いテキサス・レ ンジャーのマーカス(ジェフ・ブリッジス)は、相棒のアルバート(ギル・バーミンガム)と一緒に捜査に乗り出す。(シネマトゥデイより)

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この作品、ほんとうに面白いです。今年のアカデミー作品賞にさらっとノミネートされていたので何となく見始めましたが、ぐいぐい見入り、特に後半は時間を忘れるほどのめり込んで見てしまいました。とにかく、すべてのシーン・セリフが洗練されていて無駄がない。テキサスという何とも言えない田舎街の淀んだ空気感、どこかドロっとして汚い役者たちの素晴らしい演技、なめるようなカメラワークと、見事に言葉が紡がれている最高の脚本。すべてのバランスが絶妙で、一時も見逃せません。本年度のアカデミー賞で作品賞、脚本賞助演男優賞(ジェフ・ブリッジス)にノミネートされているのも頷ける1作です。

 

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追う者、追われる者という構図でストーリーは進んでいきますが、キャラクターたちがすごく魅力的で、憎めないやつばかり。追う者を演じるのは、ジェフ・ブリッジスとギル・バーミンガム。定年間近の警官マーカスと、その相棒のアルバートの喧嘩のようなやり取りは、人種差別の嫌味も言いながら、どこか親子のようなコンビネーションで、映画に良いアクセントを与えています。特段、ジェフ・ブリッジスの円熟の効いた演技は本当にお見事でした。アカデミー賞助演男優賞ノミネートも納得です。

 

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一方、追われる者を演じているベン・フォスタークリス・パインも素晴らしい。暴走しがちな兄・タナーと、計画的で慎重派の弟・トビーのバランスが絶妙で、こちらも本当の兄弟に見えました。

 

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そしてストーリーの組み立てや、何より緩急のバランスも、非常に素晴らしいです。冒頭ワンカットで始まる銀行強盗シーンでグッと引きつけられたかと思いきや、警官同士のオフビートな会話で気が緩む。緊張と緩和が連続するストーリーは見ていて全く飽きず、ラスト十分にためてからの緊張シーンの連続にはすさまじく興奮しました。

 

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あと全編を通して、映像の色合いがカラッとしていたからか、見ていてすごく喉が渇きました。飲み物を飲めばいいじゃないかという話なんですが、飲み物を飲むのも忘れて、のめり込んで見てしまうんですよね。また、じっくりと映像を見せてくれるネチッとしたカメラワークも非常に好きでした。

 

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この作品は、「Netflixオリジナル作品」であり、日本では劇場公開されていません。日本では、恐らくNetflixでの配信のみです。今後劇場公開されるかどうかは分かりませんが、是非劇場でも見てみたいですね。アメリカでは2016年に公開され、そのあと数か月後にNetflixで配信されているようです。アカデミー賞ノミネート作品をネットでいつでも見れるチャンスですので、是非ご覧ください!

 

でも、ちょっとこのポスターはださくないか?笑



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監督
デビッド・マッケンジー

キャスト
ジェフ・ブリッジス
クリス・パイン
ベン・フォスター
ジル・バーミンガム
マリン・アイルランド


★4.6点

「ローグ・ワン」を観ました。とにかく泣けて仕方ない。縁の下の力持ちを描いたSW版「サムライ」映画。スピンオフとはこう作るのだ。

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帝国軍の誇る究極兵器デス・スターによって、銀河は混乱と恐怖にさらされていた。窃盗、暴行、書類偽造などの悪事を重ねてきたジン(フェリシティ・ジョーンズ)は反乱軍に加わり、あるミッションを下される。それはデス・スターの設計図を奪うという、困難かつ無謀なものであった。彼女を筆頭に、キャシアン(ディエゴ・ルナ)、チアルート(ドニー・イェン)、ベイズチアン・ウェン)、ボーティー(リズ・アーメッド)といったメンバーで極秘部隊ローグ・ワンが結成され、ミッションが始動するが……。(シネマトゥデイより)

 

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これぞ、スピンオフ。まさに、スピンオフの教科書のような作品が誕生しました。いやというか、もはや本家のシリーズを食ってしまっている。エピソードⅣを何倍も面白くした作品と言われてますが、まさにその通り。この作品、面白すぎます。作品への愛が止まりません。言葉にするのが難しいのですが、本作はスターウォーズを心の底からから愛している人が作ったスピンオフだということが、見ていてすごく伝わってきます。随所にSW愛が溢れていて、展開がエモすぎて…もう泣いた泣いた。涙枯れるほど泣きました。スターウォーズシリーズ史上、最も泣けるんじゃないでしょうか。とにかく涙が止まりませんでした。

 

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本作は、スターウォーズのエピソードⅣ(旧3部作の1作目)の直前までのエピソードを描いています。エピソードⅣは、ルークやレイア姫の反乱軍が、設計図をもとに帝国軍の要塞「デス・スター」をぶっ潰す、というまぁざっくり言えばその様なストーリーなんですが、その前段階で実は「デス・スター」の設計図を盗み出すために暗躍したチームがいたんですよね。それが、「ローグ・ワン」というチームです。彼らの活躍が無ければ、ルークたちがデス・スターを破壊することは出来なかった訳です。では、彼らはどうやって「デス・スター」の設計図を盗み出したのか。本作で描かれるのは、そこの話です。正直、本作を見る前にエピソードⅣの鑑賞は「絶対条件」だと思います。本作単体でもストーリーは追えますし、十分面白いです。が、それでは絶対だめだ!と声を大にして言えるほど、エピソードⅣに見事なまでに話が繋がっていて、ハッキリ言って観てる・観てないで感動が10倍くらい変わると思います。なんてったって、エピソードⅣのまさに直前、10分前くらいまでを描いているんですから。

 

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正直、前半・中盤はゆったりしていて暗くて、面白いけど少し物足りなさを感じました。ですが、ラストの南国のような星・スカリフでの大合戦は、終始、口あんぐり状態。あまりにも素晴らしくて、見ていて息ができなくなるくらいすごかったです。SW史上最も美しい星なんじゃないかと思うほど綺麗な星で、地図を手に入れるためにキャラクターたちが文字通り命を懸けて戦い、一人、また一人と死んでいく。とにかく次から次へと障害が襲ってきて、全然上手くいかない。首の皮1枚つながった!が、もうリアルに50回くらい続いて、安堵、ピンチ、安堵、ピンチの応酬です。最後の最後まで安堵できず、ああああがんばれええええっ、で、ああああ、で、うぎゃーーーーーベイダーやばああああああ!!!!、で、おっしゃーーー!!!!、で、エンドロールという感じです。乱文すみません。ラストの編集、脚本は本当に見事としか言いようがないですね。また、クレニック提督のエピソードなど、まさかの帝国軍側にもエモポイントがあるという憎さも素晴らしいです。

 

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そして、登場するキャラクターもすごく魅力的でした。主人公のジンやキャシアンはもちろん、K-2SOも可愛いし、ゲイレンを演じたマッツミケルセンも見事にハマっていました。でも個人的に一番好きだったのは、チアルートとベイズのコンビですね。このコンビは最高で、もうラストのところは涙がとまりませんでした。盲目のチアルートを演じたドニーイェンは本当によかったですね。ジェダイではないながらもフォースを信じ続けるその真っ直ぐな姿勢に、何度も胸打たれました。あと、宇宙で反乱軍の指揮をとった血が上りやすいラダス提督も好きでしたね。男前でした。

 

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エピソードⅣでのデス・スター破壊は、ルークたちももちろんかなり苦労するんですが、思いのほか、最後はあっけなく一撃で爆発するんですよね。でも、これ実は、、、という、ここにまさかの主人公ジンとその父親ゲイレンのエピソードが絡んでくるんですね。これには正直、めちゃくちゃ驚かされました。これがあったから、こんなに簡単に爆発したのか!と、そこでも親子愛に号泣しました。この何年越しかの伏線回収は、ワンピースのラブーンのエピソードくらいの大掛かりじゃないでしょうか。いやそれ以上か。それくらい素晴らしかった。この記事を書きながら、本作のシーンたちを思い出して、また泣きそうになりました。

 

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縁の下の力持ちを描いた見事なSW版「サムライ」映画。残念ながら、劇場公開は昨日で一斉に終わってしまいました。あぁー、もう一回観たい。



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監督
ギャレス・エドワーズ
脚本
クリス・ワイツ / トニー・ギルロイ
音楽
マイケル・ジアッキーノ
キャスト
フェリシティ・ジョーンズ
ディエゴ・ルナ
ドニー・イェン
ベン・メンデルソーン
マッツ・ミケルセン
アラン・テュディック
フォレスト・ウィテカー
リズ・アーメッド
チアン・ウェン


★4.9点